予備ハンダは"ねじってから"|より線がバラける失敗を防ぐ正しい順番
予備ハンダ(tinning)は、ケーブル製作の仕上がりを左右する大事な工程です。でも、順番をひとつ間違えるだけで台無しになることがあります。それが「より線をまとめずに、いきなり予備ハンダしてしまう」失敗。この記事では、あえて"悪い例"の動画を見ながら、なぜ先に先端をねじってまとめるべきなのか、そして正しい順番とコツを、ケーブル専門店KMsoundが解説します。
この記事で分かること
・より線をまとめずに予備ハンダする "悪い例"で何が起きるか
・先にねじるべき3つの理由
・「① ねじる → ② 予備ハンダ」の正しい順番とコツ
・やりがちな 「盛りすぎ」の落とし穴
▲ これは"悪い例"です。より線(細い銅の素線の束)をまとめないまま予備ハンダすると、素線が散ってハンダが均一に回りません。本来は、この前に「ねじってまとめる」工程が入ります。
1. よくある失敗:より線を"バラけたまま"予備ハンダ
シールドの網線や芯線などのより線は、細い銅の素線が何本も束になってできています。被覆を剥いた直後は、この素線がふわっと広がった状態。ここでいきなりハンダごてを当てると、次のような問題が起きます。
- 素線が四方に散る:一部の素線にしかハンダが乗らず、残りは浮いたまま。
- はみ出した素線がトラブルの火種に:飛び出た1本が隣の端子に触れてブリッジ(短絡)・ショートの原因になります。
- イモ付け・盛りすぎになりやすい:束がまとまっていないと、ハンダが芯まで染み込まず、表面だけ団子状に固まりがちです。
つまり、失敗の多くは「ハンダの腕」ではなく"準備の順番"で決まっています。ハンダ付けそのものの基本は ハンダ付けのコツ|"3秒の判断" にまとめていますが、今回はその一歩手前の話です。
2. なぜ"ねじってから"なのか──3つの理由
予備ハンダの前に、より線の先端を指先で軽く「キュッ」とねじってまとめる。たったこれだけで、次の3つが変わります。
- ハンダが芯まで均一に回る:素線がひとつの束になることで、毛細管現象でハンダが内部まで吸い込まれ、表面までなめらかに仕上がります。
- はみ出し・ヒゲがなくなる:素線が散らないので、隣接端子へのブリッジやショートの火種を物理的に減らせます。
- 端子付けが一発で決まる:まとまった先端はプラグの端子(ホール・ラグ)に通しやすく、本付けでのやり直しが減ります。
3. 正しい順番──「① ねじる → ② 予備ハンダ」
下処理から本付けまでの流れの中で、予備ハンダの位置づけを整理すると、こうなります。
- 下処理(被覆を剥く・整える)
外皮を剥き、シールド網をまとめ、芯線を出す。詳しくは シールドケーブル自作の下処理。
- 先端をねじってまとめる
より線の先端を、指先で一方向に軽くねじる。素線がひとつの束になればOK。ここが今日の主役。
- 予備ハンダ(線材側)
束ねた線にこてを当て、反対側からハンダを供給。芯まで染みて、うっすら銀色になったら離す。
- 本付け(プラグの端子へ)
予備ハンダ済みの線を端子に固定して接合。流れは ケーブル製作のハンダ工程 に。
4. ねじるときの3つのコツ
- 力は"軽く":ギチギチに締め上げる必要はありません。素線が散らない程度にまとまればOK。強くねじりすぎると素線が切れることがあります。
- 一方向に:行ったり来たりさせず、同じ向きにそろえてねじると、束が安定します。
- 指で触りすぎない:手の脂が付くとハンダのノリが悪くなります。気になるときはアルコールで軽く拭いてから。
5. やりがちな落とし穴──"盛りすぎ"に注意
ねじってまとめても、今度はハンダを付けすぎるとまた別の問題が出ます。
「ねじって、芯まで染ませて、でも盛りすぎない」。この加減は ハンダ付けのコツ の温度・量・引き際の考え方と同じです。
まとめ|順番を変えるだけで、失敗はぐっと減る
予備ハンダの失敗の多くは、腕ではなく順番。被覆を剥いたら、いきなりハンダではなく、まず先端をねじってまとめる。「① ねじる → ② 予備ハンダ」を守るだけで、ブリッジ・イモ付け・やり直しがぐっと減ります。今回の"悪い例"動画と、ご自分の作業を見比べてみてください。
"見えないひと手間"を、一本ずつ。
KMsoundは、CANARE・MOGAMI を使ったシールド/パッチ/XLR ケーブルを
長さ・カラー・プラグ形状を選んで、熟練職人が一本ずつ手作業で製作。
下処理・予備ハンダから全数導通チェックまで、丁寧に仕上げてお届けします。