シールドケーブルの構造|芯線・絶縁体・網線・外皮の役割と、下処理が大事な理由
毎日使っているシールドケーブル。でも、その"中身"を見たことがある人は意外と少ないはず。この記事では、芯線・絶縁体・シールド(網線)・外皮がそれぞれ何をしているのかと、組み立て前の「被覆を剥く下処理」がなぜ仕上がりを左右するのかを解説します。まずは、職人が一本ずつ下処理する様子をご覧ください。
▲ 外皮を剥き、シールド線をまとめ、介在(繊維)を切って芯線を整える「下処理」の工程
(動画の線材は、赤・白2本の芯線を持つバランスタイプです)
シールドケーブルの基本は4つの層
楽器用の一般的なシールドケーブル(芯線1本のアンバランス型)を例にすると、外側から内側へ次のような層構造になっています。実際の構造は線材によって異なるので、ここでは共通する基本形として見てください。
- ① 外皮(シース/ジャケット)
いちばん外側のカバー。内部を保護し、曲げやすさ・耐久性・色を担います。動画の冒頭でストリッパーを当てている黄色い部分がこれです。 - ② シールド(網線)
芯線のまわりを細い銅線で包む層。外から入ろうとするノイズを受け止めてグラウンド側へ流し、信号の帰り道(グラウンド)も兼ねます。網状に編んだ「編組」と、らせん状に巻いた「横巻(スパイラル)」があります。動画で、剥いたあと指でねじって一方向にまとめている銅色の線がこれです。 - ③ 絶縁体
芯線のすぐ外側を覆う樹脂の層(ポリエチレンなど)。芯線とシールドが触れてショートしないよう隔てるのが役割です。 - ④ 芯線(導体)
音の信号が通る中心の線。細い銅線を数十〜百本あまり撚り合わせたものが一般的です。動画の線材では、赤・白の被覆の中に芯線が入っています。
線材によって加わる層:介在と導電層
基本の4層に加えて、線材によっては次のような層が入ります。
- 介在(充填材):芯線が複数あるケーブルなどで、すき間を埋めて断面を丸く保つための繊維などの詰め物。動画で、白い綿のような繊維をニッパーで切っている場面がこれにあたります。
- 導電層(導電性PVC・導電ビニルなど):絶縁体とシールドのあいだに入る、電気を通す樹脂の層。ケーブルを曲げたり踏んだりしたときに生じるタッチノイズを抑える目的で使われます。
例として、当店で扱う楽器用の線材2種の公式仕様を並べます。同じ「シールドケーブル」でも、シールドの方式や寸法が違うことが分かります。
| 項目 | CANARE GS-6 | MOGAMI 2524 |
|---|---|---|
| 導体 | OFC 127/0.1(1.0sq) | 50/0.12(0.565sq) |
| 絶縁体 | ポリエチレン 外径3.0mm | ポリエチレン 外径2.7mm |
| 導電層 | あり(導電ビニル) | あり(導電性PVC) |
| シールド | 編組(被覆率92%以上) | 横巻(約55/0.18) |
| 外径 | 5.8mm | 6.0mm |
出典:カナレ電気「OFCラインケーブル」製品ページ/MOGAMI「W2524」製品ページ
つまりシールドケーブルは、「信号を通す芯線」を「ノイズを防ぐシールド」で包み、そのあいだを絶縁体(線材によっては導電層も)で隔てた構造です。この"隔て"を保ったまま端末を処理できるかどうかが、組み立て前の下処理にかかっています。ちなみにカナレ電気は GS-6 について、編組シールドの内側の導電ビニルが中心導体に触れるとショートの原因になるため、触れないよう結線するよう注意を促しています。
下処理が仕上がりを左右する3つの理由
動画のように外皮を剥く工程は、ただ皮をむいているだけに見えて、組み立て後には見えなくなる部分の品質を決める作業です。理由は3つあります。
- 芯線を傷つけないため。刃が深く入って芯線の素線を切ったり傷をつけたりすると、残った素線に負担が集中し、断線・接触不良の原因になり得ます。刃を当てる深さの加減が大切です。
- 網線と芯線のショートを防ぐため。シールドの細い線が1本でも芯線側に残ったり、導電層が芯線に触れたまま組み立てたりすると、ショート(音が出ない・ノイズが出る)の原因になります。網線はねじって一方向にまとめ、導電層は必要な分だけ取り除きます。
- 剥き長さを揃え、はんだ接続を確実にするため。剥き長さが長すぎると芯線の露出が増えて網線に触れやすくなり、短すぎるとはんだが十分に乗らず接続が弱くなります。プラグに合わせて長さを揃えることで、はんだ付けとケーブルの固定が安定します。
実際の剥き方・工具・作業の順番は、シールドケーブル自作の下処理|被覆剥き・シールド整え・カットの基本 で手順として解説しています。
雑な下処理が招く、よくあるトラブル
・剥くときに芯線にキズ → 使ううちに断線しやすくなる
・シールド網線がバラけて芯線に接触 → ショートによる音切れ・ノイズ
・剥き長さがバラバラ → はんだ付けが不安定になり、根元の断線につながる
ケーブルのトラブルにはさまざまな原因がありますが、下処理と仕上げの精度不足はその原因のひとつになり得ます。
KMsoundは、この"見えない工程"に手をかけています
KMsoundのケーブルは、CANARE・MOGAMI といったプロ定番の素材を、職人が一本ずつ手作業で下処理。芯線を傷つけず、シールドを整え、最適な長さで仕上げます。そして組み上げた後は一本ずつ手でハンダ付けし、出荷前に全数、音の導通までチェック。本番で安心して使える一本をお届けすることを目指しています。
自分で作ってみたい人へ
「自作してみたい」という方も、まずはこの下処理の丁寧さを意識するだけで仕上がりが変わります。とはいえ、芯線を傷つけずに剥く・シールドを整えるのは想像以上に繊細な作業。「確実な一本がすぐ欲しい」「本番が近い」なら、下処理から導通チェックまで仕上げた完成品を選ぶのが結局いちばんの近道です。シールドの選び方は こちらの記事 もどうぞ。