出荷前に全数チェック|ケーブルテスターで断線・結線を確かめる方法
「本番でいきなり音が出ない」「たまにガリッと音が途切れる」——ケーブルのトラブルがやっかいなのは、外側をいくら眺めても原因が分からないところです。KMsoundでは、仕上げたケーブルを出荷前とAmazonへの納品前に、一本ずつケーブルテスターに通してからお届けしています。この記事では、テスターで何が分かるのか、そしてテスターを持っていなくてもできる確認手順をまとめました。

▲ 手作業で仕上げたケーブルは、この後かならず検品の工程に入ります。
ケーブルの不具合は「見た目では分からない」
被覆に傷ひとつ無くても、中の芯線が切れかけていたり、プラグの中でハンダが外れかけていたりすることがあります。ケーブルは、ある日ぱったり「壊れる」よりも先に、じわじわ「調子が悪くなる」もの。その途中経過をつかまえるのが、テスターの役割です。
よくある症状は、だいたい次の4つに分かれます。
- 音がまったく出ない — 完全な断線か、プラグ内のハンダ外れ
- 音は出るが小さい・こもる — 導通はしているが接触が不十分なケースがあります
- ジーというハムやブツブツというノイズ — シールド(網組)の接続不良を疑う場面
- 動かすと音が途切れる — いわゆる接触不良。一番見つけにくいタイプ
特に厄介なのが最後の「動かすと途切れる」症状です。じっとしていれば普通に鳴るので、家では再現せず、ライブの本番でだけ顔を出したりします。なお、ノイズの原因はケーブル以外にもありますので、切り分けの全体像はライブ・録音のノイズ対策|ケーブルでできることもあわせてご覧ください。
KMsoundは出荷前・Amazon納品前に、一本ずつ通しています
KMsoundのケーブルは、CANARE・MOGAMIの素材を使い、熟練職人が一本ずつ手作りしています。手ハンダで仕上げる理由はケーブルは"手作り"で変わる|職人が一本ずつハンダ付けする理由に書いた通りですが、この記事のテーマはその先——作り終えたあとの検品です。
仕上げたケーブルは、出荷前に必ずケーブルテスターに通します。Amazonへ納品する分も同じで、納品前にチェックしてから送り出しています。手作業で仕上げるからこそ、最後は「作った本人の感覚」ではなく、機械の表示で確かめる。そういう考え方でやっています。
ケーブルテスターで「何が分かる」のか
テスターは、難しい数値を読む道具ではありません。ケーブルの両端を挿すと、LEDの点き方で状態を教えてくれます。見るポイントは大きく5つです。
| 見るところ | 何が分かるか |
|---|---|
| ピンごとの 点灯パターン | どのピンが向こう側のどのピンにつながっているか。1番同士・2番同士…と正しく点けば結線OK。点かないなら断線かハンダ外れ、別のピンが点くなら結線ミス(ホットとコールドの入れ違いなど) |
| 断続の検出 (INTERMITTENT) | 一瞬でも接触が途切れたら知らせてくれる機能。ケーブルを揺すりながらテストすれば、「たまに音が切れる」の正体が確定する |
| シールドの 接地表示 | 網組シールドがきちんとグラウンドに落ちているか。ここが未接続だと、音は出ていても外来ノイズを拾いやすくなる |
| ファントム 電源の検出 | つないだ回線にファントム電源(一般に+48V)が来ているかどうか。コンデンサーマイクが鳴らないとき、マイク側の問題か卓の設定かを切り分けられる |
| テストトーン | テスターから信号を送り込み、スピーカーやヘッドホンで鳴るかを聞く。「回線がどこまで生きているか」を音で確かめられる |
バランス接続やファントム電源そのものの仕組みについては、XLRケーブルとは?バランス接続の仕組みを解説で図解しています。
テスターが無くてもできる、7つのチェック手順
テスターが手元に無くても、原因の切り分けはかなりのところまでできます。コツはひとつだけ、一度に一つだけ変えること。あれこれ同時に触ると、何が効いたのか分からなくなります。
- まず音量を絞る。アンプのボリュームを下げてから始めます。診断中は大きなノイズが出ることがあり、スピーカーと耳を守るためです。
- ケーブルを1本だけ入れ替える。別のケーブルに替えて症状が消えれば、犯人はそのケーブルで確定です。エフェクターやアンプ側は触らず、ケーブルだけを差し替えます。
- プラグの根元をやさしく曲げる。つないだ状態で、プラグの付け根をそっと折り曲げてみます。ここは一番傷みやすい場所で、「ブツッ」と音が出たら根元の断線かハンダ外れが濃厚。強く折らないでください。根元を補強しておく方法は熱収縮チューブの使い方|プラグ根元の断線を防ぐ固定術にまとめています。
- ケーブル全体を握って動かす。端から端まで、手でゆっくり握りながら送っていきます。特定の場所で音が途切れたりノイズが出たりすれば、そこが弱っています。
- プラグを軽く回してみる。挿したままプラグをそっと回して、ガリガリと音が出る場合はジャック側の可能性もあります。ケーブルを替えても同じ症状なら、疑うのは楽器やアンプのジャックです(ジャックのガリ修理・交換のやり方)。
- 目で見て、触って確かめる。被覆のよじれ・つぶれ・折れ癖、プラグのぐらつき、ネジのゆるみ。踏まれた跡や、巻きグセの強く付いた箇所は要注意です。
- 判定する。3〜5のどれかで症状が再現したら、そのケーブルは本番投入をやめます。予備に回すか、プラグ交換・再ハンダで直せることも多いです。

▲ 手順3で確かめる「プラグの付け根」。ここは力が一点に集まるため、あらかじめ固めておくと傷みにくくなります。
- 必ず音量を絞ってから行ってください(スピーカーと耳の保護)。
- 強く曲げない・引っ張らない。診断のつもりが、止めを刺してしまいます。
- コンデンサーマイクのXLR回線を触るときは、ファントム電源を切ってから抜き差ししてください。
この7手順で、はっきりした不具合はだいたい見つかります。逆に残るのが、出たり出なかったりする症状です。人の手では再現できないことも多く、ここがテスターの断続検出が効く場面になります。
私たちが使っているテスター:BEHRINGER CT100
KMsoundで使っているのは BEHRINGER CT100 です。本体に PROFESSIONAL 6-IN-1 CABLE TESTER とある通り、XLR/6.3mmフォン(TRS)/3.5mmミニ/TT(バンタム)/RCA/MIDI の6種類に対応します。ギターシールドもマイクケーブルもRCAも、道具を持ち替えずに見られるのが実務では助かるところです。
使い方は拍子抜けするほど簡単で、ケーブルの片端をIN側、もう片端をOUT側に挿すだけ。あとはLEDの点き方を見ます。パネルには PIN 1 / SLEEVE・PIN 2 / TIP・PIN 3 / RING がINPUT列とOUTPUT列の2列で並んでいて、どのピンがどこにつながっているかがそのまま目に見えます。INTERMITTENT(断続)表示と RESET ボタン、GROUNDED SHIELD(シールドの接地)、PHANTOM(ファントム電源)の表示もあり、先ほどの表のうち上の4項目はこの状態のまま確認できます。
残るテストトーンは、メインスイッチを TEST TONE に切り替えて使います。テストトーンは 1 kHz と 440 Hz の切り替え、出力レベルは +4 dBu / -10 dBV / -50(マイクレベル)の3段です。マイク入力へ送るなら -50、ライン入力なら +4 か -10、と挿す先に合わせて選びます。メインスイッチは CABLE TESTER / TEST TONE / OFF。電源は単3形アルカリ乾電池2本(別売)なので、使い終わったら OFF へ。
価格・在庫はサウンドハウスの商品ページでご確認ください。対応端子や最新の仕様については、メーカー・販売店の情報もあわせてご覧いただくのが確実です。
テスターが「要る人」と「要らない人」
便利な道具ですが、全員に必要かというと、そうではありません。
あると効いてくる人
- バンドの機材係、PA・ライブハウス・スタジオの運営、リハーサルスタジオの管理
- ケーブルを自作する人、プラグ交換や修理を自分でやる人
- 機材が増えて、ケーブルが10本以上ある人
- 機材を貸し出す・レンタルで回す人
たぶん要らない人
- 手持ちのケーブルが1〜2本という方。この場合は、前の章の7手順で十分に切り分けられます。無理に買う必要はありません。
本数が増えると、一本ずつ耳で確かめるのが現実的でなくなります。まとめて短時間で仕分けたい、自作した一本を客観的に検品したい——そういう場面で効く道具です。
一番いいのは、自分で確かめる術を持っておくことです。そのうえで、最初から確実な一本が欲しいなら、検品を通した完成品を選ぶという手もあります。長さやプラグの選び方はオーディオケーブルの選び方ガイドにまとめました。

▲ プラグの形状や長さを選んでオーダーできます。仕上げた一本は、出荷前に必ずテスターを通します。