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Cable Know-how2026.09.12

OYAIDE G-SPOT CABLEとは?スペック表から「音」と「切れにくさ」を読み解く

当店のシールドケーブルに、OYAIDE(オヤイデ電気)G-SPOT CABLE が加わりました。紫のケーブル、という見た目の印象で語られることの多い一本ですが、中身を見るともう少し面白いことが分かります。この記事では G-SPOT の公表スペックを1項目ずつ「その数字は何のためにあるのか」に翻訳していきます。読み終わる頃には、他のケーブルのスペック表も同じ手順で読めるようになっているはずです。

OYAIDE G-SPOT CABLEで製作した紫色のギターシールドケーブル。L型プラグとストレートプラグ(L-S型)の組み合わせ

▲ KMsoundで製作した OYAIDE G-SPOT CABLE のシールドケーブル(L-S型)

OYAIDE G-SPOT CABLE とはどんなケーブルか

OYAIDE(オヤイデ電気)は1952年創業、秋葉原に店舗を構える電線・電材の専門メーカーです。オーディオ用の電源ケーブルや線材で知られていますが、楽器用ブランド「NEO by OYAIDE」も展開しており、G-SPOT CABLE はその中でも定番として長く売られているギター/ベース用のケーブルです。

メーカー自身の説明が、このケーブルの立ち位置をよく表しています。曰く、「オーディオ用ケーブルのようなハイファイ感は少なく、楽器本来のサウンドをストレートに伝送する」。つまり、高域をきらびやかに演出する方向ではなく、楽器から出た音をそのまま運ぶことを狙った設計、ということです。

ただ、こういうメーカーのコピーは——どのブランドのものであれ——それだけでは判断材料になりません。大事なのはその言葉を裏付ける構造があるかどうか。ここからは公表されている実数を見ていきます。

スペック表を5項目に分けて読む

G-SPOT CABLE の公表仕様は、内側から外側へ次の5層です。それぞれが別の仕事を担当しています。

OYAIDE G-SPOT CABLEの断面構造図。中心のアラミド繊維と導体、ポリオレフィン絶縁体、導電性PVC層、横巻シールド、紫のPVCシースの5層を実寸比で示した図

▲ G-SPOT CABLE の断面。層の厚みはメーカー公表寸法の実寸比で作図しています

① 導体「100/0.08」+中心のアラミド繊維

導体は裸軟銅線を0.08mm × 100本束ねたもの(外径1.1mm)。断面積に直すとおよそ0.5sq、AWG20相当です。

ここで見るべきは断面積より「素線の細さ」のほうです。同じ太さの導体でも、太い線を数本束ねるより細い線を多数束ねたほうが、曲げたときに1本あたりにかかる負担が小さくなります。だからしなやかで、繰り返し曲げても折れにくい。エレキ弦を想像すると分かりやすく、細い弦ほど楽に曲がりますよね。0.08mmという素線は、楽器用ケーブルとしてはかなり細い部類です。

そしてこのケーブルの特徴が、導体の中心にアラミド繊維(帝人のテクノーラ/1500デニール)が通っていること。アラミド繊維は防弾チョッキにも使われる、引っ張りに極端に強い素材です。銅線は引っ張られると伸び、伸びた分だけ細くなって最後は切れます。中心に伸びない芯を入れておくと、引っ張りの力を繊維が先に受け止めてくれる——ケーブルを足で踏んだまま歩いた、シールドに足を引っかけた、といった事故で効いてくる部分です。

ただし、過信は禁物です。
アラミド繊維が守ってくれるのは線材の途中が「引っ張られて」切れること。実際の断線でいちばん多いのは、プラグの根元が繰り返し曲げられて疲労する形です。ここは繊維が入っていても変わりません。巻き方と根元の扱いは、どのケーブルでも同じように大事です(→ ケーブルの正しい巻き方|8の字巻き)。

② 絶縁体「ポリオレフィン・厚さ0.80mm」

導体を包む白い層です。ここは音、とくに高域の出方に効く場所なので少し丁寧に説明します。

シールドケーブルは、芯線とシールドが絶縁体をはさんで向かい合った構造をしています。これは電気的にはコンデンサー(キャパシタ)と同じ形で、実際に静電容量を持ちます。この静電容量が大きいほど高域が削れやすくなる——いわゆる「ハイ落ち」です。

静電容量を決めるのは主に2つ。絶縁体の材質(誘電率)その厚みです。誘電率が低い材質を、厚く入れるほど容量は下がります。G-SPOT が使うポリオレフィン(ポリエチレン系)は、一般的なPVCより誘電率が低い素材で、しかも0.80mmと厚めに巻かれています。構造としては静電容量を抑えやすい設計と言えます。

なお、G-SPOT の静電容量そのものはメーカーから公表されていません。後述する MOGAMI 2524 と絶縁体の材質・寸法がかなり近いので極端な数字にはならないと考えられますが、当店として断定はしません。長さと高域の関係については ケーブルの長さは音に影響する? で詳しく扱っています。

③ 導電層「導電性PVC・厚さ0.35mm」

絶縁体の外側にある黒い層です。これはシールドではなく、タッチノイズ対策の層です。

ケーブルを踏んだり、他のケーブルと擦れたり、床を引きずったりすると、内部の絶縁体が変形して摩擦で電荷が発生します。これが「ガサッ」「ゴソッ」というノイズになって出てくる。ハンドリングノイズ、あるいはトライボエレクトリック・ノイズと呼ばれる現象です。

導電層は、この発生した電荷をその場でシールド側へ逃がすバイパスです。外から飛んでくるノイズを防ぐ層ではなく、ケーブル自身が生むノイズを抑える層——ここを混同しないのがポイントです。足元で他のケーブルと密集するボードの中や、ステージで動き回る使い方ほど、この層の有無が効いてきます。

④ 横巻シールド「0.18mm・57本±5本」

ここで外来ノイズを受け止めます。照明のディマー、電源トランス、スマートフォンなどが撒く電磁ノイズを拾い、アース側へ流す役割です(→ ライブ・録音のノイズ対策)。

注目したいのは「横巻(スパイラル)」という巻き方です。シールドには大きく2方式あり、それぞれ得意分野が違います。

方式横巻(スパイラル)編組(ブレイド)
巻き方一方向にらせん状に巻く網状に編み込む
しなやかさ柔らかく、取り回しが軽いやや硬く、腰がある
被覆率編組よりは低め高い(90%超の製品も)
弱点急角度に折り曲げると巻きに隙間ができ、シールド効果が落ちることがある硬いぶん取り回しの自由度が下がる

G-SPOT は横巻を選んだケーブル。しなやかさと取り回しを優先した設計です。その代わり、鋭角に折る・きつく巻くといった扱いは編組よりも苦手と考えておくと安心です。ちなみに「57本±5本」と本数も公差も書かれているのは、それだけ管理されている証拠でもあります。

⑤ シース「PVC・紫・厚さ1.12mm」

仕上がり外径は6.0mm。楽器用シールドとしてはごく標準的な太さで、標準フォンプラグのブッシングにそのまま収まるサイズです。

そして色は紫の1色のみ。これは単なる見た目の話ではなく、実用上のメリットがあります。ボードやラックで何本ものケーブルが並ぶとき、色が信号区間のラベルとして機能するからです。「紫=ギターからボードまで」と決めておけば、トラブル時に追うべき一本が一目で分かります(→ パッチケーブルの選び方)。

この5項目は、他のケーブルにもそのまま使えます。
ケーブルを検討するときは、①導体の素線(細さ・本数)/②絶縁体の材質と厚み/③導電層の有無/④シールドの方式/⑤仕上がり外径——この5つを探してみてください。
そして「書かれていない項目」にも意味があります。5項目すべてを公表しているメーカーは、それだけ自分の設計に説明責任を持っているということ。逆に「高音質」「プロ仕様」といった言葉しか並んでいない製品は、判断材料そのものが与えられていない、と受け取れます。

CANARE GS-6/MOGAMI 2524と実数で比べる

当店のシールドで選べる線材のうち、代表的な3種類を同じ項目で並べてみます。すべて各メーカーの公表仕様です。

項目CANARE GS-6MOGAMI 2524OYAIDE G-SPOT
導体OFC 127/0.1
1.0sq(AWG18)
OFC 50/0.12
0.565sq(AWG20)
裸軟銅線 100/0.08
約0.5sq(AWG20相当)
+中心にアラミド繊維
絶縁体ポリエチレン
外径3.0mm
ポリエチレン
外径2.7mm
ポリオレフィン
外径2.7mm
導電層あり(導電ビニール)あり(導電性PVC)あり(導電性PVC)
シールド編組(被覆率92%以上)横巻 約57/0.18横巻 0.18/57本±5本
外径5.8mm6.0mm6.0mm
静電容量160pF/m130pF/m非公表
カラー6色
(黒・赤・黄・橙・緑・青)
ブラックパープル

並べると、いくつかはっきりすることがあります。

なお MOGAMI 2534 はXLR(バランス接続)の定番ですが、当店ではシールドの線材としてもお選びいただけます。

「OFC」と「裸軟銅線」の違いについて

表を見て気づかれた方もいると思います。GS-6と2524の導体がOFC(無酸素銅)と書かれているのに対し、G-SPOTは裸軟銅線——いわゆるタフピッチ銅です。ここは隠さず書いておきます。

両者の違いは銅に含まれる酸素の量で、タフピッチ銅が0.02〜0.04%程度、OFCが0.001%以下とされます。この差が楽器用ケーブルの数メートルで音として聴き分けられるかについては、正直なところ意見が分かれるところです。当店としては「OFCだから上、タフピッチ銅だから下」という言い方はしません。実際、G-SPOTが狙っているのは銅の純度ではなく、素線を細くして本数を増やし、中心に繊維を通すという「構造」のほうです。何にコストと設計を割いた製品なのか——スペック表はそこを教えてくれます。

数字の読み方に、ひとつだけ注意を。
静電容量の差(160 vs 130pF/m)が効いてくるのは、ケーブルが長いときと、楽器がパッシブ(ハイインピーダンス)のときです。3mのシールドなら全体で百pF程度の差にとどまり、「言われれば分かる」程度のことが多い。アクティブベースやDI以降のライン信号では、さらに差は縮まります。スペックの差=聴こえる差、ではありません。それでも構造を知っておくと、「なぜこの音がするのか」を自分の言葉で説明できるようになります。

どれを選べばいい?用途別の判断

正解は1つではありませんが、迷ったときの切り分け方としてはこうなります。

こんな人・こんな場面向いている線材理由
音を前に押し出したい/ロック系バンド/ノイズの多いライブハウスCANARE GS-6太い導体と編組シールド。中低域に厚みが出やすく、ノイズにも強い
原音に色を足したくない/宅録・レコーディング中心MOGAMI 2524録音の世界標準。フラットで解像度重視
よく動く/足元で踏まれがち/取り回しの軽さを最優先OYAIDE G-SPOT細い素線100本としなやかなPVCシース。中心のアラミド繊維が引っ張りを受け持つ
ボードの中で線を色分けして管理したいOYAIDE G-SPOT/GS-6の各色紫は他と被りにくく、信号区間の目印として機能する

逆に、G-SPOTが最適解ではない場面もはっきり書いておきます。横巻シールドは編組ほど被覆率が高くないので、照明機材の真横を長距離引き回すような厳しい環境では、編組シールドのGS-6のほうが無難です。また当店のG-SPOTはパープル1色のみなので、複数本を色で細かく分けたい方にはGS-6の6色展開のほうが合います。

色分けは「何を色に対応させるか」を先に決めると機能します。
運用ルールは次のどちらかに統一しておくと迷いません。 どちらの場合も、暗いステージでは明るい色ほど目が拾いやすく、逆に見せたくない配線は黒で沈められます。そして決めた対応は、ボードを組んだ状態でスマホで1枚撮っておくのがおすすめです。バラして組み直すときに、配線を1本ずつ追い直さずに戻せます。使用歴そのものの記録の付け方は シールドケーブルの寿命|交換時期の見分け方 にまとめました。

「ブランドで音は変わるのか」を自分で確かめる方法

ここまで構造と実数、そして用途別の切り分けを並べてきました。ただ、こうした「向き不向き」の整理も含めて、最後にひとつ押さえておきたいことがあります。「どの構造が音として優れているか」という話になると、主張は売り手の立場でひっくり返ります。

実例があります。編組シールドを推す説明と横巻シールドを推す説明が、どちらも「こちらのほうが構造的に優れている」という形で、同じように流通しています。どちらかが嘘をついているわけではありません。優劣として決着していないから、売る側の都合でどちらにも書ける、というだけの話です(構造そのもののトレードオフは前半の④で書いたとおりで、横巻は取り回し、編組は被覆率が持ち味です)。

音の印象のほうも同じように割れます。G-SPOT について、メーカー自身は「中低域の密度が濃い」と説明していますが、第三者の検証記事には「中高域にピークがある」という評もあります。これは矛盾ではなく、印象は聴く人・機材・部屋で変わることの実例です。だとすれば、優劣の断定は誰のものであれ鵜呑みにせず、最後は自分の機材で確かめるのがいちばん早い。条件を揃えた比べ方を置いておきます。

  1. 長さを揃える。長さが違えば線材以前に音は変わります(→ ケーブルの長さは音に影響する?)。プラグと機材のセッティングも固定します。
  2. 同じフレーズを、同じ設定で、ケーブルだけ差し替える。記憶で比べると思い込みが入るので、録音してあとで聴きます。
  3. 歪ませてから比べない。まずクリーンで。歪みは差を潰すことも、逆に誇張することもあります。
  4. 音量を合わせる。わずかな音量差は「良くなった」と錯覚させ、比較そのものを台無しにします。
  5. 短時間で行き来しない。1本を数日使ってから戻すと、演奏のしやすさ——結局いちばん効く要素——も一緒に評価できます。

そして、いちばん大事なこと。違いが分からなかったら、それが正しい結論です。ケーブルで変わる幅は、ピックアップや弦、アンプの設定に比べればずっと小さい。まず確実に鳴って、扱いやすいこと。ここが満たされていれば、そのケーブルは十分に仕事をしています。

作る側から見たG-SPOT|当店の組み方と、純正完成品との違い

ここは正直にお伝えしておくべきところです。

当店がお作りするG-SPOTのシールドケーブルは、NEO by OYAIDE の完成品とは別のものです。使っているのは切り売り(バルク)のG-SPOT CABLE——線材そのものは同じですが、純正完成品に付くOYAIDE専用プラグ(P-260MG/P-260MLG)ではなく、当店オリジナルプラグ、またはSwitchcraft製を組んでお届けします(Switchcraft製は追加料金となります。金額は商品ページに記載しています)。

「線材はOYAIDE、プラグは当店」という構成です。これをどう評価するかはお客様次第ですが、当店としては長さを細かく選べること、プラグ形状(L-L/L-S/S-S)を自由に組み合わせられること、そして壊れたときに開けて直せることを優先しています。プラグの品質をどう見るかについては 自社製プラグは大丈夫?プラグの品質を構造で見抜く方法 に、当店の考え方をすべて書いています。

職人が一本ずつ手作業でプラグ内部のハンダ付けをしているところ

製作上の実感も少し。G-SPOTは素線が0.08mmと細いぶん、被覆を剥くときに気を使う線材です。ストリッパーの刃をわずかに深く入れただけで素線を何本か持っていってしまう。素線が数本切れても導通自体は出てしまうので、テスターでは分かりません。そこは目視と手の感覚で確認しながら進める工程です(→ シールドケーブル自作の下処理)。

また中心のアラミド繊維は、ニッパーでは切れずに伸びるだけという厄介な性質があります。無理に引っ張ると導体を痛めるので、繊維用のハサミで処理してから予備ハンダに進みます。このケーブルは、扱いが分かっている人が組むかどうかで仕上がりの差が出やすい線材だと感じています。

当店では線材によらず、断線の起きやすいプラグ根元を熱収縮チューブで固め、出荷前に全数をテスターで導通チェックしてからお送りしています(→ ケーブルテスターの使い方)。ハンダはKESTER44です。

OYAIDE G-SPOT CABLE、オーダー受付中です。

アラミド繊維入りの導体としなやかな取り回し。紫のG-SPOT CABLEを、
長さ・プラグ形状を選んで職人が一本ずつお作りします。
CANARE GS-6 / MOGAMI 2524・2534 との比較もそのままご覧いただけます。

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